本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長と、レッドハットの望月弘一 代表取締役社長の発言を紹介する。
「私自身は経営についてより深く考える時間を取れるようにしたい」
(日本マイクロソフト 平野拓也 代表取締役社長)
日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長
日本マイクロソフトが先ごろ、自社で実践する働き方改革の新たな取り組みとして、「週休3日制」などを採り入れたプロジェクト「ワークライフチョイスチャレンジ2019夏」を今夏に実施すると発表した。平野氏の冒頭の発言はその発表会見の質疑応答で、このプロジェクトにおける自らの時間の有効な使い方を問われて答えたものである。
同社は働き方改革(ワークスタイルイノベーション)を経営戦略の中核に位置付けており、自社の基本理念として「ワークスタイルチョイス」を掲げている。ワークスタイルチョイスは、社員一人ひとりが仕事(ワーク)や生活(ライフ)の事情や状況に応じた多様で柔軟な働き方を“自らがチョイス(選択)”できる環境を目指すという考え方だ。
今回の新たな取り組みでは、このワークライフチョイスの推進に向けたプロジェクトを自社で実践することで、全社員(約2300人)が「短い時間で働き、よく休み、よく遊ぶ」ことにチャレンジし、生産性や創造性の向上を目指すとしている。なお、この取り組みについては効果測定(向上、削減、満足の観点など)を行い、実践後にその結果を公表する予定だという。
プロジェクトの実施内容としては、ワークライフチョイス推進の機会を提供する「週勤4日&週休3日制トライアル」、およびワークライフチョイス推進の実践を支援する「ワークライフ社員支援プログラム」からなる。その詳細とともに会見全体の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは平野氏の冒頭の発言をめぐる会見での質疑応答のやりとりに注目したい。
今回のプロジェクトで目を引くのは、やはり週勤4日&週休3日制トライアルだろう。これに対し、自らの時間をどう有効に使いたいと考えているか、と問われた平野氏は、「経営者は皆同じかもしれないが」と前置きした上で次のように答えた。
「時間的に余裕ができるので、あえて何も作業をしない時間を設けて、経営に関するさまざまな物事についてより深く考えることに努めたい。そして、その後の自分の言葉や行動の質を一段と高めていきたい」
裏を返せば、「これまで出勤時は分刻みでスケジュールが入っており、深く考える時間をなかなか取ることができなかった」(平野氏)ということだ。その意味では社長自身にとっても貴重なトライアルになりそうだ。
ただ、これまで勤務時間の短縮を進めてきた企業の間で、最近になって短縮を取りやめる動きも出てきている。限られた時間の中で手持ちの仕事をこなすことに社員が手いっぱいになってしまうといったケースがあるからだ。日本マイクロソフトの今回の取り組みは、そんな企業にもアドバイスとなる働き方改革の進め方と効果を示すことができるか。注目しておきたい。
会見で質問に答える日本マイクロソフトの手島主税 執行役員常務クラウド&ソリューション事業本部長兼働き方改革推進担当役員(左)と平野氏